2012年10月26日金曜日

冬は、つとめて。雪の降りたるべきにもあらず。霜のいと白きも、またさらでも、いと寒きに、火など急ぎ熾して、炭もて渡るも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりて、わろし。(枕草子・・・冬の1節)



冬の釣り

さあ、冬の釣りがやってきました。春・夏・秋と読まれた方は「やわな釣り」なんぞは期待していないと思います。そうです、ご期待に答える必要があります。



「冬の荒磯」

春の釣りで紹介した「磯のフカセ釣り」の厳寒バージョンですと思っていただければよいのかと思います。 ただ、「春の磯」は ♪♪ 小春日和の~う・ら・ら・か・な・日の~ ♪♪ 瀬戸内海でのロケーションであります。冬になるとロケーションが激変します。
春の磯とは様相が一変します

小生のこの釣りのスタートは、「春の釣り」で紹介した瀬戸内海での「チヌのフカセ」がはじまりです。瀬戸内でのチヌは大きくても50cm迄です。10数年前、このチヌを釣っている時、外道で30cm弱のグレがかかったのであります。小さいわりにシャープな引きをみせたのです。自称「磯プロ」を自認する小生がこの獲物を見逃すわけがありません、見逃せません。
このグレ釣りの最盛期は12月から2月までなのであります。都合の良いことにこれで春・夏・秋・冬と埋め尽くすことが出来ます(ばんざ~~~い、ん?)


四国~九州へ

研究熱心な病人はすぐ「現地調査」にはいります。春の磯の延長ですから早くなじめます。まずは、手始めは四国地方の「宇和海、由良、武者泊り、沖ノ島」そして、その後九州まで足を伸ばして「鹿児島県の甑島」まで行くようになりました。研究熱心な小生の旅はまだまだこんなところでは立ち止まりません。
旅が続くのであります。もう、狂ったように冬の荒磯の巡礼の旅にでかけるのであります。最後に辿り着いたのは、磯釣り師の聖地「憧れの男女群島」です。


憧れの男女群島へ


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田平町から高速渡船で約3時間です

正月が明けると病人が集合してスケジュール調整にかかります。この病人達は自分から進んで隔離病棟に入院したい猛者ばかりなのであります。2月の初旬~中旬に的を絞ります。
では、具体的なスケジュールを書いてみましょう。


金…朝4時岡山発、12時頃長崎の平戸着。
今生の別れの末期の食事を取り15時頃渡船に乗船。18時男女群島に上礁(夜釣り)。

土…朝7時頃舟の見廻りで磯替わり(日中釣り)。
12時頃舟の見廻りで磯替わり(日中釣り)。16時頃舟の見廻りで磯替わり(これから夜釣り)

日…朝4時頃舟の見廻りで磯替わり(夜~日中釣り)。
9時頃迄釣り、そして帰港へ。13時すぎに平戸着。岡山着は21時頃となります。


そう、大変厳しい釣りです。着の身着のままで、食事はカップラーメンかレトルト食品か缶詰です。帰る前の2食だけは渡船から白米とタクアンだけの弁当配給があります。大量のお湯なんか沸かせるわけも無いので体も拭けません。トイレは・・・・・(ウ~~~~ン、お尻が寒い)です。
睡眠時間は初日が4時間程度、2日目も4時間程度。シュラフに丸まって寝ますが、寝返りを打ってゴロリと海に落ちれば、ナンマイダ~~~~です。シュラフの下は岩場で冷たいこと冷たいこと。気温は氷点下にはならないものの風速は10m前後、ひどいときは20mにもなります。体感気温は氷点下以下です。

まるで修行です。

好きな人は不眠不休で竿を出しています。


口太グレ(45cm級です  よく引きますよ~~)

こんな仕掛けで

爆釣を、してみたいとウキに願掛け(自筆)

「サメ瀬」「帆立」「SOS」これらは男女群島の特級磯です、こんな良い場所に上がると入れ食いになります。日中釣りは2号~3号竿でハリスは4号~5号を使い、獲物はゴボ~~~抜きです。夜釣りは4号竿でハリスは10号ですが、この10号ハリスを簡単に切っていく化け物が居ます。獲物は口太グレに尾長グレ、外道も様々です。

さて、今の小生の気持ちは、釣り自体もですが、そのスケールとロケーションに接することに喜びを感じています。朝、磯に独り立ち「押して来る黒潮の流れと磯群、そして孤島の岩肌」に接すると、身も心も洗われるのであります。本当に大自然に感謝です。

「来年も、また来るぞ~~」
52cm  2.3kgです(四国の西海での獲物です)



以上、春夏秋冬の釣りの紹介が終わりましたが、未達の目標は「昼の磯釣りでの尾長グレ 60cm」であります。いつか・・・・・と確信しています。
その目標を達成した後は、ゆっくりと落ち着いて「枯れた釣り」でも楽しみたいものです。


長文へのお付き合い、大変有難うございました。

2012年10月19日金曜日

秋は、夕暮。夕日のさして、山の端(は)いと近うなりたるに、鳥の寝どころへ行くとて、三つ四つ、二つ三つなど、飛び急ぐさへあはれなり。まいて雁などの連ねたるがいと小さく見ゆるは、いとをかし。日入り果てて、風の音、虫の音など、はたいふべきにあらず。(枕草子・・・秋の1節)



秋の釣り

秋の釣りとなると、普通はハゼ釣りか飯蛸釣り、はたまたゆったりとした秋磯での釣り、というのんびりした風景を思い浮かべますが、小生の場合は違うのであります。

夏の釣りで紹介した「鮎の友釣り」は6~8月と書きましたが、小生の「友釣り」は、とある時を境に9月(初秋)が最盛期となったのであります。では、



岡山への転勤

「友釣り」に狂った病人が○○年前岡山(郷里)に転勤したのです。当時、岡山の川は友釣りのメッカでした。都会から帰った小生には信じられませんでした。車で30分~1時間も走れば竿が出せるのです。水も奇麗で魚も多く、そして釣果にも恵まれ、まさに天国に来た気分です。

ましてセンスの良さと研究熱心な小生は、釣行の都度、30匹、50匹(自慢じゃないが他の人の数倍は・・・・)の釣果です。いつでも魚屋が開けると思っていました(冗談ですよ)。1日の最高釣果は○○川で114匹であったと記憶しています(注・・現在は河川状況の悪化と鮎の質が悪くなってしまい見る影もありません)。
この頃は8月末には竿を置いていました。そして、大きいといっても24~25cm迄でした。



そして尺鮎へ(秋の釣り)

球磨川の大鮎です(これで28cmです)
 
15年ほど前の事です。それまでは8月末には鮎竿を置き9月からは秋磯か舟釣りに通っていた(すでに、この頃には家族との約束から開放されていました)のですが、その年の8月末ごろ九州の球磨川に行きました。
この時、驚愕の魚を目にし、そして手にしたのです。27~28cmの鮎です。まさに鯖のような鮎です「これが鮎?」と思わず言葉が飛び出しました。さあ、これからが大変です。生来の「負けん気」と「研究熱心」さが鎌首をもたげます。

皆さんの食卓に上がる鮎は大きくても20~23cm程度だと思います。中学生の頃の数学を思い出してください「面積は長さの2乗に比例し、体積は3乗に比例する」。これを鮎釣りのパワーに変えると「18cmまでは小学生、20cmで中学生、23cmで高校生、25cmで大学生です。さあ、これが27、29となり、30になると・・・・2乗3乗、4乗」と倍々になるのです。それほどパワーが強くなるのです(ほんと~~~~です)。

上が大鮎用の針   下が初期の鮎用
当然自分で巻きます、願いをこめて



球磨川もうで

友釣りに狂った病人の「球磨川もうで」が始まりました。お盆を過ぎると土・日は都合の付く限り遠征です。

そこは日本三大急流の球磨川です。流れの強さと水量は半端ではありません(だから鮎も大きくなるのです)。いくら好きとはいえ、流されて生死の間をさまよってはいけません。だから釣り装束は流されても浮いて助かるようウエットスーツなんぞを着込みます(とても釣りの姿ではありません)。
同じ病気に罹った人との出会いも沢山出来ます。もう頭の中は「尺鮎」がグルグルと泳ぎ回っている病人の集団です。そう、川中での格闘技大好き人間の集団なのであります。

30cm迄のサイズはいくつも掛けました。28~29cmはざら、果ては尻尾を引き伸ばし、伸ばしてやっとの30cm。しかし尺(30.3cm)には届きません。この0.3cmが大変大きな壁なのであります。         

日本三大急流の球磨川(この川底に大鮎が居ます)
流されてしまうと命の保障が・・・・・・・・・。

釣り人(球磨川本流)



夢の尺上

3年前の事です。この年は川の状況も良く、9月に入ると28~29cm台がよく掛かりました。その日の事は忘れもしません。朝方、瀬の中に囮を差し込むと「ドカン」と一発。敵は強烈なパワーで剛竿を絞りこみます。竿は満月でギシギシと、糸はギュンギュンと糸鳴りし、瞬時に尺鮎と確信しました。

小生はほとんど「引き抜き」で取り込みますが、大きくなると2匹も同時に玉網に受けることが出来ません。独特の取り込み方法の、振り子抜き(専門用語で申し訳ない、理解できる人には理解できます)で獲物をキャッチします。一見で尺オーバーを確信しました。
これが長年追い求めていた「尺鮎」なのだと思うと、一瞬頭の中が真っ白になりました。そして「大願成就」の余韻にひたったのであります。この鮎は囮として使うことも無く大事に「別のおとり缶」にキープしたのでした。

この日は格段に状況がよく、その後も28~29cmが掛かります。目が慣れてくると大きさの感覚にズレが発生します。夕方には当日の最長寸(31.5cm)がかかったものの、尺もあるとは思わず、これを囮として使っていました。

河川の恵みに感謝です


次の目標は一尺一寸です

2012年10月12日金曜日

夏は、夜。月の頃はさらなり。闇もなほ。蛍の多く飛び違ひたる。また、ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。(枕草子・・・夏の1節)


夏の釣り

カンカンと照りつける太陽の下、ただ一人清流の川面にたたずみ静かに糸を垂れる釣り人が居ます。そう、日本古来の独創的な釣り「鮎の友釣り」であります。なんと風情のあることか。


鮎の一生

皆さんご存知のように鮎は年魚であり、10月頃河口近くで孵化して海で稚魚期を過ごします。3~4月になると川に遡上し、川の石の苔を食べて大きくなり、9月に入ると川を下り河口近くで産卵し、生涯を閉じるのです。

その最盛期の6~8月には川石に付いた苔を食べてドンドン大きくなります。このコケを食べるために縄張りを持ちます、この縄張りを利用して釣るのが「日本伝統の釣法 鮎の友釣り」であります。(いちゃ~~~、長かった。説明に疲れました。)

 石へのハミ跡です。よく磨かれています
 
 初期の頃の若鮎です



友釣り

小生がこの「友釣り」と出会ったのは○○年前です。当時は東京での勤めで、釣りと名が付くものは手当たり次第に首を突っ込んでいました。舟釣りでは房総の真鯛、ひらめ、イサキにイカまでも。磯釣り・防波堤釣りでは黒鯛やメバルなどです。家族とゆっくりする以外は魚釣り一本です(夜の魚を追う暇なんかは決してありゃ~~しませんでした)。

とある時、会社の先輩から「一緒に友釣りを始めてみないか」とのお誘いが・・・。小生は「もう今の釣りで十分です、お金も時間もありません」と答えたのです。ところが生来の魚釣り大好き人間、すぐ興味を持ちます。本を買い、雑誌を読み漁り、釣具屋巡りが始まります。
確か、数週間後には道具が全て揃いました(金の調達方法は忘れました・・・・・)。最初の河川は先輩との同行で「那珂川」へ行きましたが、素人が2人、当然坊主でした。

やる気・負けん気がフツフツと沸き、次週は単独で「酒匂川」へ釣行しましたが、イリコのようなのがたった1匹でした。ただ、生きた囮で生きた魚を掛ける。本当に「なんじゃ~、これは、こんなんで本当に掛るんじゃの~~~」と驚きを感じたのです。その次の週はまたまた単独での「久慈川」釣行となっていました。
釣り人(本人ではありません)


この川で病気を患ったのであります。そう「友釣り病」という病です。今でも鮮明に覚えていますが、二十数匹掛けました。一発で「病人」になってしまったのであります。
友釣りとは、元気な囮で野鮎を掛け、掛けた野鮎を囮にして、また新しい鮎を掛ける「循環の釣り」であります。
囮の操作方法が釣果を大きく左右します。魚が自分から泳ぐように差し向けるのです。中には小生のように言うことを聞かない囮がいます。辛抱します、決して魚の鼻面を引き回してはいけません、そんなことをすると益々いうことを聞かなくなります。待つのです(これが出来たら女房の操縦なんて・・・・・・・へのかっぱです)。

この釣りにはまってしまうと逃げ出せられません。そう、人は「友釣りは悪魔の遊戯」と呼びます。
この年の暮れ「家族との約束」をしました。「来年の6月から8月の休暇は全部鮎釣りをする。その代わり他の釣りは全部やめて家族サービスに徹する」と。

鮎につかれた病人が発生したのであります。
 

本日終了(奇麗な鮎です)

2012年10月5日金曜日

春は、あけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは 少し明りて紫だちたる雲の細くたなびきたる。

有名な「枕草子」の春の1節であります。

こんな落ち着きたる気持ちで四季の釣りを紹介できたらと願うのであります。


春の釣り


春は桜鯛であります。日本古来のおめでたい席に必ず飾られる魚であり、船からは昔ながらの漁師さんのビシ釣り、現代っ子の鯛カブラ、はたまたひとつテンヤ、数々あります。そうそう、浜や磯からの投げ釣りもありますよね。

小生は磯から釣るのであります。そう、俗に言う「磯のフカセ釣り」で真鯛を狙うのです。
春の朝の磯です

この「磯のフカセ釣り」にドップリとはまって○○年。昔はチヌ(黒鯛)狙いでありましたが、近年は放流事業の効果か、はたまたシェルナースの増殖効果か、真鯛が増え「磯のフカセ」でも釣れるようになってきたのであります。自称「磯プロ」を自認する小生がこの獲物を見逃すわけがありません。見逃せません。


磯の真鯛を狙い始めてから約10年になります。4~5月の休日には瀬戸内の磯の上に乗っかっています。今迄に仕留めた獲物は数百匹(段々、話が面白くなってきましたね~~)、真鯛の天敵といわれています。ただ、瀬戸内の磯からの釣りであるがゆえ大物といっても50cm迄でしょうか。

真鯛を狙うようになってからチヌは外道扱いとなりました。当然片端から釣り、その都度次から次に放流し、渡船の船長からは「瀬戸内のチヌを守る会の会長」とまで称されるほどになっています(嘘です)。 


さて、今年の5月吉日、場所は小豆島の・・・・。時季外れの強風が吹きつけるなか自称「磯プロ」は今日も前祝いの「のどごし生」を「グビッ~」と一杯飲んだ後、コマセ(魚を寄せる集魚剤)を撒きに撒くのでした。今日も快調であります。すでに数匹の真鯛が・・・・、チヌも・・・・。

ドラマは突然にやって来るものです、そう、やって来たのです。竿3本分沖のウキがマッハのスピードで沈んだのであります。間違いなく真鯛のアタリです、プロの眼力がそう判断します。
合わせと同時にチヌ竿は満月、道糸は20mも引き出されたでしょう(ここで、取り込んだ魚の大きさの難易度の高さが理解できるよう仕掛けの説明を・・・チヌ竿1号、道糸2号、ハリス1.75号です。要はキシャな仕掛けです)。
 こんな仕掛けで 
 
鬼神の如く釣ってみたいとウキに願掛け(自筆)


やり取りすること約10分、海中に、ピンク色をした目の上のブルーのアイシャドーが眩しい、真っこと美しい真鯛が浮いてきたのです。その姿を確認した時

「こりゃ~~~絶対、獲ったる、獲っちゃる。獲らにゃ~~~おえん(方言)」

と叫んだのであります。
最後の抵抗の「ひとのし」を、数々の修羅場を踏んだキャリアがなせる華麗な竿捌きでいなし、玉網に収めたのです。

「ほんに、お前は食った餌(釣り人)が悪かったの~~~」

と一人つぶやき「グビー」と本当の祝杯をあげたのであります。そして、お付き合いしてくれた獲物と、素晴らしい海に感謝したのであります。
お疲れ様でした